ファイナンシャルプランナーの仁志詩馬です。
「うちは家族の仲が良いから、遺言書なんて必要ない」
「財産も少ないし、揉めることなんてない」
そう思われている方は、実は少なくありません。しかし、相続をきっかけに、それまで仲の良かった家族の関係がこじれてしまうケースは、残念ながら後を絶ちません。
遺言書は、ご自身の最後の意思を明確に示し、残されたご家族を「争族」から守るための、最高のプレゼントです。
この記事では、代表的な遺言書である「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類について、それぞれのメリット・デメリットや、法的に有効な書き方を分かりやすく解説します。
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遺言書を作成する3つの大きなメリット
- 相続トラブルを防止できる: 誰にどの財産を渡すかを明確に指定できるため、遺産分割協議での揉め事を防げます。
- 法定相続人以外にも財産を渡せる: 内縁の妻や、特にお世話になった長男の嫁など、法律上の相続人ではない人にも財産を遺すことができます。
- 相続手続きの負担を軽減できる: 遺言書があれば、相続人全員の戸籍謄本収集や遺産分割協議書の作成が不要になるケースが多く、手続きがスムーズに進みます。
「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」徹底比較
遺言書にはいくつか種類がありますが、一般的に利用されるのはこの2つです。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
---|---|---|
作成方法 | 全文、日付、氏名を自書し、押印 | 公証役場で公証人に作成してもらう |
メリット | ・費用が安い(ほぼ0円) ・いつでも手軽に作成できる ・内容を秘密にできる |
・法的に無効になる心配がない ・原本が公証役場に保管され、紛失・改ざんの恐れがない ・家庭裁判所の「検認」が不要 |
デメリット | ・法的な不備で無効になるリスク ・紛失、改ざん、隠匿のリスク ・発見後に家庭裁判所の「検認」が必要 |
・作成に費用と手間がかかる ・証人が2人必要 |
費用 | 保管制度利用で3,900円 | 数万円~(財産額による) |
おすすめな人 | とにかく手軽に始めたい人 | 確実に意思を実現したい人、財産が多い人 |
自筆証書遺言の書き方と注意点
自筆証書遺言は、以下の要件を必ず守って書く必要があります。一つでも欠けると無効になってしまうので注意しましょう。
- 全文を自筆で書く(※財産目録はパソコン作成可)
- 日付(年月日)を正確に自筆で書く
- 氏名を自筆で書く
- 押印する(認印でも可だが実印が望ましい)
【保管制度の活用】
作成した自筆証書遺言は、法務局で保管してもらう制度(費用3,900円)があります。これを利用すれば、紛失のリスクがなくなり、面倒な家庭裁判所の「検認」も不要になるため、自筆証書遺言を作成した際は、必ず利用することをお勧めします。
公正証書遺言の作成手順
- 遺言の内容(誰に何を渡すか)を決める。
- 必要書類(印鑑証明書、戸籍謄本など)を準備する。
- 証人を2人決める(適当な人がいなければ公証役場で紹介してもらえる)。
- 公証役場へ行き、公証人と打ち合わせを行う。
- 作成日当日、公証人、証人2人の前で遺言内容を確認し、署名・押印する。
まとめ
遺言書は、単なる事務的な書類ではありません。ご家族への感謝の気持ちや想いを「付言事項」として書き添えることで、あなたの愛情を形として残すことができます。
どちらの方式が良いかは、ご自身の状況によって異なります。まずは手軽な自筆証書遺言からでも構いませんので、元気なうちに「終活」の一環として、遺言書の作成を検討してみてはいかがでしょうか。
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