- 【最重要】相続税の負担を軽くする「未成年者控除」とは?
- そもそも相続税とは?申告が必要になる基準
- 未成年者の相続、手続きは誰がどう進める?
- 【注意】相続した財産で収入を得たら「確定申告」が必要になることも
- まとめ:未成年者の相続は、まず専門家へ相談を
こんにちは!ファイナンシャルプランナーの仁志詩馬です。
「もし親に万が一のことがあったら、未成年の自分でも財産を相続するの?」「相続税ってすごく高いって聞くけど、払えるか心配…」
ご自身の年齢に関わらず、相続は誰にでも起こりうる身近な問題です。特に未成年の方が当事者となる場合、ご本人も親権者様も、何をどうすれば良いのか分からず不安に感じてしまうのは当然のことです。
しかし、ご安心ください。日本の相続税には、未成年者の負担を大きく軽減するための「未成年者控除」という非常に重要な制度が用意されています。
今回は、未成年者の相続に焦点を当て、絶対に知っておきたい「未成年者控除」の仕組みから、相続税の計算方法、具体的な手続きの流れまで、FPの視点から分かりやすく解説します。
【最重要】相続税の負担を軽くする「未成年者控除」とは?
まず、未成年の方が相続人になった場合に使える、最も強力な制度「未成年者控除」について理解しましょう。
これは、相続人が未成年者である場合に、納めるべき相続税の額から一定の金額を直接差し引くことができる制度です。
控除できる金額は、その未成年者が18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算します。 ※2022年4月1日の民法改正により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
未成年者控除額 = (18歳 - 相続したときの年齢) × 10万円
例えば、父親が亡くなり、12歳の子供が相続人になったケースで考えてみましょう。
- 相続したときの年齢: 12歳
- 18歳になるまでの年数: 18歳 - 12歳 = 6年
- 未成年者控除額: 6年 × 10万円 = 60万円
この場合、本来納めるべき相続税額が80万円だったとしても、そこから60万円を差し引けるため、実際の納税額は20万円で済むことになります。もし計算した相続税額が控除額より少ない場合(例:相続税30万円、控除額60万円)、相続税はゼロになります。
そもそも相続税とは?申告が必要になる基準
では、そもそも相続税はどのような場合に発生するのでしょうか。
相続税は、亡くなった方(被相続人)が遺した財産の総額が基礎控除額を超える場合にのみ、申告と納税の義務が発生します。つまり、遺産総額が基礎控除額以下であれば、相続税は1円もかかりません。
相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。
例えば、父が亡くなり、相続人が母とあなた(子)の2人だった場合、基礎控除額は $3,000万円 + (600万円 × 2人) = 4,200万円$
となります。
遺産の総額(預貯金、不動産、有価証券などをすべて合計した金額)が4,200万円以下であれば、相続税の申告も納税も不要です。
未成年者の相続、手続きは誰がどう進める?
実際に未成年者が相続人となった場合、手続きはどのように進められるのでしょうか。
申告と納税は親権者(法定代理人)が行う
相続税の納税義務者は財産を相続した未成年者本人ですが、申告書の作成や納税といった手続きは、親権者などの法定代理人が代理して行います。
申告と納税の期限は非常に重要で、「相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内」と定められています。
遺産分割協議には「特別代理人」が必要な場合も
相続人が複数いる場合、誰がどの財産をどれくらい相続するのかを決める話し合い「遺産分割協議」を行います。
ここで注意が必要なのは、親権者自身も相続人であるケースです(例:父が亡くなり、母と未成年の子が相続人)。
この場合、親権者である母が「自分の取り分を多く、子供の取り分を少なく」決めてしまうと、子供の利益が損なわれる可能性があります。このような利益が相反する状況を「利益相反」といい、家庭裁判所に申し立てて「特別代理人」を選任してもらう必要があります。
特別代理人は、未成年者の利益を守るため、本人に代わって遺産分割協議に参加します。
【注意】相続した財産で収入を得たら「確定申告」が必要になることも
相続税の申告とは別に、注意したいのが「所得税の確定申告」です。
例えば、以下のようなケースでは、相続した財産から新たな収入(所得)が生まれます。
- 相続したアパートやマンションから家賃収入を得る(不動産所得)
- 相続した株式から配当金を受け取る(配当所得)
- 相続した土地や建物を売却して利益が出る(譲渡所得)
これらの所得の合計額が、基礎控除である年間48万円を超えた場合は、相続税とは別に、翌年に所得税の確定申告が必要になります。これも年齢に関わらず発生する義務なので、覚えておきましょう。
まとめ:未成年者の相続は、まず専門家へ相談を
今回は、未成年者の相続税について、特に重要な「未成年者控除」を中心に解説しました。
- 未成年者が相続人になった場合、「未成年者控除」を使えば税負担を大幅に軽減できる。
- 遺産総額が「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」の基礎控除額以下なら相続税はかからない。
- 相続税の申告手続きは親権者が代理して行うが、期限は10か月以内。
- 親権者も相続人である場合は、「特別代理人」の選任が必要になることがある。
- 相続した財産から収入が生まれれば、別途「確定申告」が必要な場合も。
未成年者が関わる相続手続きは、税金の計算だけでなく、遺産分割協議などで特別な配慮が必要になるなど、非常に複雑です。
もしもの時に慌てないためにも、まずは相続に詳しい税理士や弁護士、あるいは私のようなファイナンシャルプランナーに相談し、適切なサポートを受けながら手続きを進めることを強くお勧めします。